建設業許可とは、元請・下請、法人・個人を問わず、建設工事の完成を請け負う者で、軽微な建設工事(※1、2)のみを請け負う場合を除いて必要になる許可です。
建設業許可を取得することによって、大規模な工事も取り扱えるようになり、さらには取引先からの信用も高まることが期待できます。
近年は企業のコンプライアンス遵守意識も高まっており、取引先に対して建設業許可の取得を取引条件としてあげる事例もみられるようになりました。
「あればいい」から「なければならない」許可になりつつあります。
この記事では、そんな建設業許可の「許可の種類」や「許可取得までのハードル(要件)」等について説明しております。
最後まで読んでいただければ、建設業許可の全体像がわかる内容になっておりますので、是非最後までご覧ください。
※1 軽微な建設工事…1件の請負代金が500万円未満の工事(建築一式工事の場合は1,500万円未満、または延面積が150㎡未満の木造住宅の工事)
※2 解体工事・浄化槽設置工事・電気工事業は、軽微な建設工事のみを請け負う場合であっても他法令により登録(建設業許可とは別)が必要になりますのでご注意ください。
・1件の請負代金が500万円以上の大規模な工事も請け負いたい方
※1 建築一式工事の場合は1,500万円以上、または延面積が150㎡以上の木造住宅の工事
・取引先からの信用をアップさせたい方
・今後、公共工事の受注も視野に入れている方
・融資の審査の際に少しでも有利に交渉いたい方
どの許可が必要?読めばわかる建設業許可の種類
建設業許可は、【行いたい工事の種類】、【本店・支店の所在地】、【下請業者への発注金額】によって取得しなければいけない許可が変わってきます。
間違った種類の許可を取得してしまうと、希望の工事を請け負えなくなったり追加で申請が必要になる場合もありますので十分に注意しましょう。
それでは建設業許可の種類について説明していきます。
建設業許可の業種
建設業許可には、29種類の業種があります。
業種は大きく分けて、一式業種(2業種)と専門業種(27業種)に分けられています。
工事の種類分けの判断で悩むことも多く、間違えると事業に影響する項目なので慎重に判断する必要があります。
一式業種(2業種) |
土木工事業、建築工事業 |
専門業種(27業種) | |||
大工工事業 | タイル・れんが・ブロック工事業 | 塗装工事業 | さく井工事業 |
左官工事業 | 鋼構造物工事業 | 防水工事業 | 建具工事業 |
とび・土工工事業 | 鉄筋工事業 | 内装仕上工事業 | 水道施設工事業 |
石工事業 | 舗装工事業 | 機械器具設置工事業 | 消防施設工事業 |
屋根工事業 | しゅんせつ工事業 | 熱絶縁工事業 | 清掃施設工事業 |
電気工事業 | 板金工事業 | 電気通信工事業 | 解体工事業 |
管工事業 | ガラス工事業 | 造園工事業 | – |
建設業許可の知事許可と大臣許可
建設業許可には、【知事許可】と【大臣許可】という種類があります。
知事許可
1つの都道府県(宮城県)にだけ建設業の営業所を設置する場合
大臣許可
2つ以上の都道府県(宮城県+他の都道府県)に建設業の営業所を設置する場合
建設業許可の特定建設業と一般建設業
建設業許可には、【特定建設業】と【一般建設業】という種類があります。
特定建設業
元請(発注者から直接工事を請け負う者)が、工事の一部を下請に出す場合で、その契約金額(※1)が4,000万円(建築一式工事の場合は6,000万円)以上になる場合。
一般建設業
特定建設業の許可を受けようとする者以外。
つまり、元請(発注者から直接工事を請け負う者)が、工事の一部を下請に出す場合で、その契約金額(※1)が4,000万円(建築一式工事の場合は6,000万円)未満になる場合、又は工事の全てを自社で施工する場合。
※1 複数の下請業者に出す場合はその合計額
建設業許可の5つのハードル(要件)
建設業許可を取得するためには、主に次の5つのハードル(要件)を越えることが必要がです。
要件1.適正な経営体制
適切な経営能力を有していること
建設業許可において、一番の難関と言われているのが「適正な経営体制」の要件です。
この要件がクリアできないがために建設業許可を取得できないという事例も多くみられます。
具体的には、「法人の役員」や「個人事業主」等としての経営経験を一定期間有している人物(経営業務の管理責任者)の配置が求められます。
(例)建設会社の役員としての経験が5年以上ある人物が常勤の役員として勤務している→【許可要件クリア○】
要件2.専任技術者
専任技術者を営業所ごとに置いていること
建設業許可は、高い技術を持った人物を営業所ごとに配置することを求めています。
適正な請負契約の締結、安全で正確な工事を行うために「専任の技術者」は欠かせない存在だからです。
専任技術者になるには、一定の実務経験であったり指定の資格を有している必要があります。
(例)「業種に対応する資格保有者」、「許可を受けようとする建設業の業種に関する実務経験を10年以上有している者」が各営業所に常勤している→【許可要件クリア○】
要件3.誠実性
請負契約に関し、不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者ではないこと
「不正な行為」→請負契約の締結又は履行の際における詐欺、脅迫、横領等の法律に違反する行為
「不誠実な行為」→工事内容、工期等請負契約に違反する行為
(例)詐欺、脅迫、横領等の法律に違反する行為をしていない→【許可要件クリア○】
要件4.財産的基礎等
請負契約を履行するに足る財産的基礎等があること
一般建設業許可の場合、500万円を基準とする財産要件が定められています。
一定の資金を確保することによって、経営の安定、発注者・下請業者の保護を図る目的があると考えられます。
(例)直前の決算で貸借対照表の「純資産の部」の合計額が500万円以上である→【許可要件クリア○】
要件5.欠格要件等
欠格要件に該当していないこと
法律上好ましくない状況の場合には許可を出せないように一定の基準が設けられています。
審査段階で欠格要件に該当していることが判明してしまい、他の項目には問題がなくても最終的に許可が下りなかったという事例もみられます。
欠格要件には十分に注意しましょう。
(例)一般建設業の許可又は特定建設業の許可を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない者ではない→【許可要件クリア○】
まとめ
近年のコンプライアンス遵守意識の高まりもあり、建設業許可は「あればいい」から「なければならない」許可になりつつあります。
建設業許可は、【行いたい工事の種類】、【本店・支店の所在地】、【下請業者への発注金額】によって種類がわかれており、許可を取得するために満たさなければならないハードル(要件)も5つあります。
手引きにも載っていないような細かいルールも多く存在し、初めて申請する事業者様にとっては本業との両立が大変難しい申請です。
本業に集中し、許可の取得の確立を高めるためにも我々行政書士をご活用いただければ幸いです。