特殊車両を運行する際、「これくらいの超過なら大丈夫だろう」「急いでいるから許可なしで…」と、ついつい魔が差してしまいそうになったことはないでしょうか。
しかし、その一瞬の判断が、最大100万円の罰金に加え、違反が繰り返されれば貨物自動車運送事業法に基づく「事業停止命令」といった、会社の存続を揺るがす行政処分を招く可能性があります。
特殊車両の無許可走行は、運転手だけでなく事業者自身も厳しく罰せられる重大な法令違反です。
この記事では、道路法で定められた具体的な罰則内容から、罰金以外に潜む経営上の重大なリスク、そしてなぜ違反が発覚するのかを解説します。
知らないと危険!特殊車両の無許可走行で科される罰則
まず、どのような違反がどれほど重い罰則に繋がるのか、全体像を把握しておくことが大切です。
道路法では、違反の態様に応じて以下のような罰則が定められており、罰金額の上限が非常に高いという特徴があります。
特に重い「100万円以下の罰金」が科されるケース(道路法第104条)
特に注意が必要なのが、上限100万円という高額な罰金です。
道路管理者の許可なく特殊車両を通行させたり、許可証に記載された重量・寸法・経路・時間などの条件に違反した場合がこれにあたります。
なお、正規の許可を得ていても、運転時に許可証を備え付けていなかった場合もこの「条件違反」に含まれ、同様に重い罰則の対象となります。
拘禁刑もあり得る悪質なケース(道路法第103条)
金銭的な罰則だけでなく、拘禁刑が科される可能性も定められています。
これは、道路管理者からの直接的な命令に従わないなど、悪質と判断された場合に適用されるものです。
例えば、道路管理者や道路監理員からの「通行中止」や「徐行」といった命令に違反した場合や、通行が禁止・制限されている区域を走行した場合に、「6ヶ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金」が科されます。
【重要】罰則は運転手だけじゃない!事業者も罰せられる「両罰規定」とは?
無許可走行で特に注意すべき点が、この「両罰規定」(道路法第107条)です。
これは、違反行為を行った運転手個人だけでなく、その事業主である法人(会社)や個人事業主に対しても、同様の罰金刑を科すという、非常に重要なルールとなっています。
この規定により、「運転手が独自に判断したこと」という説明が通用しなくなります。
事業者には、従業員が法令を遵守するよう適切に指導・監督する責任があることが、法律で示されているのです。
罰金だけでは済まない!無許可走行がもたらす4つの重大な経営リスク
無許可走行のリスクは罰金や拘禁刑だけではありません。
事業の継続にじわじわと影響を及ぼす、副次的なダメージについても知っておく必要があります。
リスク1:行政処分による免許停止(運転免許)や事業停止
道路法違反は、道路交通法の違反点数加算の対象にもなります。
重量超過の度合いによっては一度で免許停止(運転免許)になる点数が科されることも。
さらに、道路法違反が悪質または繰り返されると、貨物自動車運送事業法に基づき、管轄の運輸局から一定期間の車両の使用停止や事業停止、場合によっては事業許可の取消しといった、さらに重い行政処分が下される可能性があります。
リスク2:取引停止にも繋がる社会的信用の失墜
コンプライアンス(法令遵守)が重視される現代において、法令違反の事実は社会的な信用を大きく損なう原因となり得ます。
「法律を守れない会社」という印象は、既存の取引先との関係悪化や、新規の取引機会の喪失に繋がりかねません。
リスク3:重大事故の誘発と保険が使えないケース
そもそも通行許可制度は、道路や橋などのインフラを保全し、交通の安全を守るために設けられています。
許可基準を超える車両の走行は、インフラを傷つけ、第三者を巻き込む大事故を引き起こす原因ともなり得ます。
万が一、法令違反が原因で事故を起こした場合、自動車保険(任意保険)が適用されない可能性も出てきます。
リスク4:運行中止命令による業務遅延と追加コスト
取締りを受けた場合、その場で車両の通行を中止させられます。
そうなると、計画していた運行スケジュールは完全に破綻し、納期の遅延や計画外の費用発生という二重の打撃を受けることになります。
「バレない」は幻想?無許可走行が発覚する監視の目
「見つからなければ大丈夫」という考えは非常に危険です。
現在では、様々な方法で違反車両の取締りが行われています。
・警察や道路管理者による取締り
・高速道路の本線や料金所付近に設置された「自動軸重計」による取締り
・他のドライバーや地域住民からの通報
これらの取締りにより、無許可走行が発覚する確率は決して低くはありません。
【まとめ】コンプライアンス遵守こそが、会社を守る最大のリスク管理です
いかがでしたでしょうか。特殊車両の無許可走行に潜む、数多くのリスクについてご理解いただけたかと存じます。
高額な罰金、事業者にも及ぶ両罰規定、事業停止命令といった行政処分、そして信用の失墜や重大事故のリスクまで、無許可走行は様々な経営リスクを内包しています。
「バレなければ大丈夫だろう、という安易な判断が、事業停止という最悪の事態を招いてしまった…」
「たった一度の違反をきっかけに、長年の取引先を失ってしまった…」
このような事態を避けるためには、目先の利益や手間にとらわれず、法令を遵守した安全な運行を徹底する強い意志と、それを実行するための体制づくりが不可欠です。
もし、自社のコンプライアンス体制に少しでもご不安のある方、リスク管理を徹底して事業を守りたい経営者様は、ぜひ一度専門家にご相談ください。
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